2017年08月29日

フランスの清水裕夫・新調教師

 いつも厩舎の応援、ならびに障害者乗馬、ホースセラピー、引退馬のキャリア支援などへのご理解、ご協力ありがとうございます。

 先月のことなので既にご存知の方がおられると思いますが、フランスから嬉しい知らせが届きました。小林智調教師に続いて2人目となる日本人調教師が誕生しました。おめでとうございます。

日刊スポーツの記事:仏で2人目の日本人調教師 清水裕夫氏が試験合格

 以下、9月の開業に向けて奮闘中の清水裕夫調教師から日本の競馬関係者、競馬ファンへのメッセージです。特にフランス競馬での馬主活動などに興味のある馬主様などおりましたら、是非、一度、コンタクトしてみてください。


清水 裕夫 (1981年10月31日生まれ・35歳)

 開成中・高校で競馬に魅了され早くも20年。卒業後は日本獣医畜産大学で馬術部に所属。記憶力は人並み以上にあるも、どこで間違ったか脳を間違った方に使ったらしく、中央全レースは勿論の事、未勝利戦の地方交流競走まで脳内インプットして歩く競馬四季報と呼ばれていました。

 こちらで働いて強く思うのは、フランスのホースマンが何よりも大事にするのは『馬場適正』ということ。日本のように一律良馬場となる事はほぼ無く、例えば種牡馬Dansiliなら良馬塲が最良条件、重馬場の方が得意なMakfi等、どのような血統がどのような競馬場・馬場(小回り・坂有り無し等)で走る傾向が強いのか、自分の最大の長所である競馬分析力の強さの原点はここにあると思います。それに加え、当時の自分の毎週欠かせなかったテレビ番組は水・木の追い切りVTR。その調教にレースを結び付けて結論付ける(解答を見つける)作業を毎週土日行っていました。一見地味な作業ですが、好きだから14、5の時からずっと続けられたのでしょう。ここフランスは勿論、ヨーロッパで調教時計を取る厩舎はほぼ皆無でもあり、競走馬を感じるのに文字通り5感が必要とされます。多くの方が仰る通り、競馬は記憶のゲームである、と。実際そうであると自分は思います。フランスでは365日競馬があるので、全レースチェックする自分としてはある意味嬉しい悲鳴ですね。日本人では間違いなく1番、フランスでも屈指のフランス競馬通だと自負しています。

 欧州競馬への興味は既に学生時代からで、当時のジャパンカップに来日する外国馬のエレガントさに憧れ、いずれは身を置いてみたいと夢見ていました。卒業後は社台ファーム勤務を経て、まずはオーストラリアへ。メルボルンに本厩舎を構えるワダムパークのブリスベン近郊にある別厩で働かせてもらいました。英語は学生時代に特に熱心に取り組んだので問題は無し。ワーホリでの滞在であったうえ、ヨーロッパ競馬産業で働くというのが人生第一目標であった為、その後単身イギリスはニューマーケットのルカ・クマーニ調教師の元へ。今でもクマーニ調教師の調教法は勿論、馬に対する姿勢、とりわけ1歳〜2歳馬に対して、大変印象に残っています。調教でもPresvisという後にドバイでG1を勝つ馬にも乗せてもらい、調教師になった今、改めて思いかえす事も多々あります。

 その後はビザの関係上長期滞在は許されず隣国フランスへ。パスカル・バリー厩舎に迎えて頂きました。2008年のことになります。フランスにて永住ビザを取得し、2013年からはファブリス・シャペ厩舎へ。自分が加わった当時は20頭前後の小さな厩舎でしたが、フランス人ではない自分に同年より副厩舎長の座を任せてもらった上、同時に現在は100頭の大厩舎に成長しました。恩を返す為にもと、身を粉にして働き、厩舎の発展過程を共に味わえ、今年はPrecieuseでG1仏1000ギニーも勝つことができ、改めて信頼してくださったシャペ調教師そして自らの事を誇らしくも思います。

 幸運にも恵まれ、厩舎を構える場所は仏の大伯楽アンドレ・ファーブル厩舎の程隣り。エルコンドルパサーを凱旋門賞で破ったMontjeuの以前暮らした厩舎を借りる事が出来ました。その上、こちらには数多くないウォーキングマシンも厩舎内に設置してあり、運動量の確保やレース後の回復にも一日の長があると思います。調教助手には、かつて香港で国際G1勝ったDoctor Dino等を担当していた腕利きフランス人を迎い入れることも出来ました。

 先日引退した凱旋門賞前売り2番人気で去年のG1仏ダービー馬Almanzorの生産者Haras d’etreham二コラ・ド・シャンビュー氏を始め、世界的に有名な競馬一家ニアルコスファミリーのアラン・クーパー氏、またクリスチャン・デムーロ騎手の専属代理人ブルーノ・バルベロー氏等、自らの社交的な性格も手伝って、徐々にですがフランス競馬界交友関係も築けつつあります。改めて、現地の言語、つまりはフランス語を流暢に喋れる事は、この調教師という信頼第一の職業性質上最重要だと感じつつあります。

 フランスにて競走馬を所有する利点、まず競走馬が日本の半額以下で購買できる事。預託料もJRA厩舎平均の半額弱(南関東程度と考えて頂けば幸いです。€=¥レート次第ですが自厩舎で2,160€税込・約28万円)な点がまず挙げられます。レース賞金も南関東とほぼ同額ではありますが、フランスではそのレースで得られる賞金に加え、フランス産馬の場合、そこに64%の内国産馬奨励金がさらに加えて獲得出来ます。それ故、フランスのセリで競走馬を購買する事が極めて有用な運用であると、経済的観点から思われます。またそれとは別に、日本では希有なサラブレッドをフランスで保持するという社会的ステータス意義も存在するのではないでしょうか。

 フランスで競走馬を購買するには、もちろん牧場から直接入ってくる場合もありますが主にセリが主流となっています。1歳馬の主なセリには8月のドーヴィル(19〜22日・2017年)、10月の同じくドーヴィル(17〜20日・2017年)があります。前者は上場馬の価値と同調して値が上がる傾向が毎年強くなっていますが、適正価格の後者も同様に活躍馬を輩出し、一昨年度このセリを経た今年3歳になる活躍馬だけでもG1英ダービー馬ウィングオブイーグルス(8月・220,000€)、G1仏2000ギニー2着ルブリヴィド(10月・42,000€)、G1仏オークス2着シスターシャーリー(10月・12,000€)等、購買した値段以上の金銭的価値は勿論の事、繁殖馬として箔が付くG1タイトルをもたらす馬を手に入れる最良の機会でもあると思います。

 一方で日本へと輸入される繁殖牝馬には、フランスで競走生活を送った馬が多く存在するのも事実です。スタセリタ(今年のオークス馬ソウルスターリングの母)、ミュージカルウェイ(一昨年のオークス馬ミッキークイーンの母)等、例を挙げれば限が無い程、当該産駒成績好調→フランスより輸入牝馬増加の好スパイラルになっている現状です。牡馬牝馬共に競走生活中(後)の競走馬を購買するよりも、まず1歳セリで目ぼしい馬を確保、競走生活をフランスで送り重賞タイトルを獲得、その後は欧州でもしくは日本へと持って行って繁殖生活を送る。こちらの方が初期投資購買額も抑える事が出来る上現役時のレース賞金も得られる、そこにフランス産馬の奨励金もあれば、経済面でも理にかなっている。Galileo、Dubawi等の欧州血統はヨーロッパ現地で走ってこそ真価が発揮できる馬が大半な上、血統馬でも市場に出回るヨーロッパであるからこそなし得る運営方法ではないでしょうか。

 英語・日本語・フランス語と、競馬先進国の3か国語を操れる欧州日本競馬マニアの人物として、完璧主義者で反骨精神の塊の自分・清水裕夫ではありますが、競馬の本場フランスはシャンティイにての調教師挑戦は誰もが得られるチャンスではないのを重々承知し、この機会を逃さず精進させて頂きます。


清水 裕夫 Hiroo Shimizu
e-mail: hirooshimizu1031@yahoo.co.jp
携帯電話: +33 (0) 6 0946 9487
20A Ave.De Joinville Impasse Rodosto 60500 Chantilly




posted by 角居厩舎 at 21:55| 滋賀 ☁| Comment(1) | 角居勝彦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
言葉は勿論ですが文化も風習も違う海外でお仕事をなさるというのは、並々ならぬ努力と度胸と覚悟がおありだったのだろうなと想像し、とても勇気をもらいました!
清水調教師の今後のご活躍に注目させていただき、陰ながら応援させていただきますね!

そして、ハッピーモーメントと山田さん!
ベストターンドアウト賞の受賞おめでとうございます!
角居厩舎ファンの1人としてとっても嬉しいニュースでした^ ^
Posted by ポポ at 2017年09月03日 20:22
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